インフォームドコンセント

どんな仕事や場面においても事前の説明って大事ですよね。

我々獣医師やお医者さんが診察する上で、いろんな病気の可能性や治療方法、費用などを事前に説明することを

インフォームドコンセント(IC)といいます。

どんなに適切な検査をし、どんなに適切な治療をし病気が治ったとしても、インフォームがでたらめだと飼主様の納得は得られません。逆に、病気が治らなかったとしても、インフォームが適切であれば飼主様は納得していただける(もちろん全力で治療をした上で、です)。これは勤務医時代に私の師がよく言っていたことです。

私がぺーぺーで未熟だった頃(今もまだまだ未熟だと思っていますが)、インフォームの重要性を身をもって体感したことがあります。

当時既に診断がついている病気(心タンポナーデ:循環器症例集参照)で、定期的な心膜穿刺(心臓の膜に針を刺して水を抜く処置)が必要なわんちゃんがいました。

心臓近くに針を刺すわけなので、当然リスクを伴います。

最初に処置をするときはしっかりと説明をしていましたが、処置の回数を重ねるにつれ、未熟だった私は説明がだんだんとおざなりになっていたように思います。

ある日、そのわんちゃんが来られました。「今日は心嚢水はあんまりないけど、胸水が溜まっているからそっちを抜きましょう。心膜穿刺に比べて安全です」と説明したことを覚えています。

実際、胸水の場合は心臓の外に水が溜まっているので心膜穿刺に比べると安全といえば安全なのですが、それでも胸に針を刺すので変わらずリスクはあります。しかし、上述のような説明をしてしまいました。

そして半日入院をし、胸腔穿刺をしたところ、みるみる呼吸が弱くなり、あっという間に心臓が止まってしまいました。今でも原因はわかりません。

急いで心肺蘇生を開始し、飼主様をお呼びしましたが、息を吹き返すことなく、そのわんちゃんは亡くなってしまいました。

「先生、なんでなんですか!大丈夫って言ったじゃないですか!」あの時の飼主様の顔、声、場面、今でも鮮明に覚えています。

事前にちゃんとリスクを説明すれば、飼い主様も毎回覚悟ができていたはずです。

インフォームが慎重になりすぎてリスクの説明ばかりになると治療に対して後ろ向きになってしまいますので、今でもインフォームは難しいと感じています。

大事なことは、納得されるまで飼主様と会話をすることだと思っております。

ありがたいことに多くの患者様にお越しいただき日々ドタバタしていますが、そんな中でも、納得していただけるまで何分でも何十分でも話をさせていただく覚悟で診察をしています。