記憶に残る治療

ありがたいことに日々多くの患者様にご来院いただいておりますが、その中には治療がうまくいって元気になる子もいれば、頑張って治療をするけれども残念ながら命を落としてしまう子もいます。

今まで何万人も患者さんを診ていることもあり、なかなか亡くなられた方全員を思い出すことは難しいですが、その中でもこの子だけは忘れられない、という子が一定数います。

いつも動物の死を目の当たりにすると泣きそうになるんですが、たいていはグッと堪えています。一番泣きたいのは飼主様なのに私が泣いてどうする、と自分に言い聞かせています。

しかし、記憶に残る患者さんというのはたいてい我慢できず僕も泣いてしまっていた子ばかりです。

飼主様の顔やお名前まではっきりと覚えています。

そんな中でも特に記憶に残るわんちゃんがいます。

レプトスピラという感染症により急性腎不全になりました。通常はどんなに積極的に治療してもおしっこが作られず数日で亡くなってしまうのですが、

このわんちゃんは1か月以上耐え、血液透析を始める直前におしっこも出始め、奇跡の回復かと思った矢先

治療抵抗性の原因不明発熱、皮膚が黒く固くなっていくという謎の皮膚病にかかり、最終的に亡くなってしまいました。

人間にも感染するおそろしい病気です。

その飼主様(昔の勤務先で診ていました)が、数年経って新たにわんちゃんを迎えられ、インスタグラムで当院のことを知り、私の診察を受けにきてくださいました。

カルテ棚に並んだ飼主様のお名前を拝見し、その後診察室で久しぶりにお顔を拝見し、あの時助けられなかった申し訳なさや、病院が変わってもまた私のところに来てくださった感動で泣きそうになりました。

今回は涙は堪えました(笑)

しかしこんなに嬉しいことはないですね。

獣医師冥利に尽きます。

皆様に信頼されるようにこれからも頑張っていこうと改めて思った朝でした。