猫の尿道閉塞に対する会陰尿道瘻
解剖
猫の尿路解剖の図を示します。

血液中の老廃物は腎臓で尿となり、腎盂、尿管、膀胱、尿道を通って外部に排出されます。
犬も人もこの順で尿が生成され排出されることに変わりはありませんが、猫は尿管および尿道が非常に狭く、種々の要因で閉塞を起こしやすいです。尿管に関しては別記事で触れますので、今回は尿道閉塞に関してのお話になります。
尿道閉塞
上述のように猫の尿道は非常に狭いです。先細りになっており、先端の内腔は1~2㎜程度しかないため、非常に詰まりやすい構造をしています。
閉塞物は膀胱の中で生成された砂状の物質(尿道栓)や膀胱結石、まれに腫瘍もありますが、尿道栓による閉塞がダントツで多いです。
猫はもともと砂漠で生きる動物のため、あまり水を飲みません。水を飲まないと排尿回数が減るため、膀胱で砂状物質が生成されたときにそれが排出されることなく溜まっていき、濃くなっていきます。これこそが尿道栓の原因です。
予防法としては下部尿路疾患の予防用フードを食べさせたり、運動やウエットフードを利用して水分摂取量を増やす工夫が挙げられますが、どれだけ頑張っていても尿道閉塞を引き起こす猫ちゃんは一定数います。
去勢した猫ちゃんと未去勢の猫ちゃんでは、去勢済みの猫ちゃんの方が発生率が高いとされています。
治療
1.内科的治療
尿道閉塞となった猫ちゃんは多くの場合急性腎不全を引き起こしており、緊急状態です。
早急に尿道カテーテルを通して排尿経路を確保し、数日はカテーテルを入れっぱなしにして、入院下で管理をすることが勧められます。
閉塞部位では尿道粘膜に炎症が起き通常よりも尿道が狭くなっているため、炎症が引くまでしばらくカテーテルを入れっぱなしにしておかないとあっという間に再閉塞してしまいます。
また、閉塞解除後はそれまで尿が出ていなかった反動で大量に排尿され(閉塞後利尿)、血中の電解質バランスが大きく崩れるため、持続的な点滴による補正が必要となります。
こういった理由から、入院下での治療は必須とされます。
2.外科的治療(手術写真があります)
尿道閉塞を繰り返す、あるいはそもそもカテーテルが通らず閉塞が解除できない場合は手術が必要になります。
尿道は先細りのため、尿道栓によって閉塞しやすいのは尿道開口部にほど近いところとなるため、手術は尿道を短縮し、太さがある程度あるところと皮膚を縫い付けることで極力閉塞が起きないようにします。

これを会陰尿道瘻といいます。
実際の手術写真です。

手術直後はこのような見た目になります。炎症による尿道狭窄を防ぎ、かつ尿による汚染も防ぐため、3日間は写真のように尿道カテーテルを留置します。手術前はは3Frという細いカテーテルしか入りませんでしたが、術後は8Frの太さが入るようになりました。倍以上の太さになりましたね。

手術から3日経過し、炎症が落ち着くとこんな感じです。
数か月や数年経ってから徐々に手術部が閉塞してくることもあるため、術後は要経過観察となります。
会陰尿道瘻で短縮できる尿道にも限界があり、その部位よりも深部で閉塞している場合はまた別の術式が適応となりますが、そちらはまた別記事にてご紹介いたします。