胆嚢粘液嚢腫(胆嚢切除)

胆嚢粘液嚢腫とは

胆嚢とは、肝臓で作られた胆汁という消化酵素を含んだ液体を貯める臓器です。

胆嚢から十二指腸までの胆汁排泄の経路図解

胆嚢から十二指腸に向かって胆管が伸びており、胆管を介して十二指腸に胆汁を排泄します。

食餌が刺激となり胆嚢が収縮し、胆汁が排泄されるという仕組みです。

本題の胆嚢粘液嚢腫とは、この胆嚢内の胆汁がなんらかの原因で粘液状に固くなり、胆汁排泄がうまく機能しなくなる病気です。

胆嚢内が粘液で満たされ胆汁が全く排泄できなくなると、行き場を失った胆汁がどんどん溜まり続け、最終的に胆嚢が破裂し、重篤な腹膜炎を引き起こします。

内科的治療

胆汁はおおまかにいうと水と油の成分でできています。

胆嚢内の粘液を排出しやすくするためには、水の成分を増やして粘液の粘稠度を下げればよいという考えの下、ウルソデオキシコール酸が使用されることが多いです。

注意点として、胆嚢内の粘液が胆管に詰まってしまっている場合(胆管閉塞)、ウルソデオキシコール酸の使用は禁忌となります(胆汁の量を増やしてしまうため)。

また、胆管から十二指腸につながる部分に胆汁排泄を調整している筋肉(Oddi括約筋)がありますが、その筋肉を弛緩させることでより粘液排出をしやすくする薬(トレピブトン)もよく使用されます。

しかし、これらの内科的治療で胆嚢粘液嚢腫が改善するケースは少なく、多くの場合は外科手術が必要となります。

近年では、胆嚢粘液嚢腫と甲状腺機能低下症を併発している場合、甲状腺の治療をすると胆嚢粘液嚢腫も改善が認められたという報告もあるため、当院では胆嚢粘液嚢腫と診断したわんちゃんは甲状腺の検査もさせていただいております。

外科的治療(手術)

内科的治療で改善が認められない場合、胆嚢摘出手術が必要となります。

胆嚢粘液嚢腫の症例全てで胆嚢破裂が起きるわけではありませんが、胆嚢が破裂して全身状態が悪い中で手術をするのと、破裂前の元気なうちに手術をするのでは麻酔リスクが格段に変わってきます。

胆嚢粘液嚢腫の症例で摘出した胆嚢

摘出した胆嚢です。中身を出してしまった後なのでしぼんでいます。中には粘液状の胆汁が大量に入っていました。破裂する前に摘出して正解でしたね。

肝臓の部分生検のために切除した肝臓の一部

胆嚢粘液嚢腫の場合、肝臓にも炎症などの異常が起きていることが多いため、同時に肝部分生検も行います。

生検した組織は病理検査会社に送り、異常の有無を調べていただきます。

摘出後は腹腔ドレーンを設置し、手術終了となります。

手術時間はおよそ1時間でした。

まとめ

胆嚢外科や肝臓外科は比較的難易度が高く手が出しづらい領域ですが、当院では手術適応であれば積極的に手術をしています。

手術に関してお困りの際は是非当院にお越しください。