腸吻合(小腸腫瘍)

小腸腫瘍とは

小腸腫瘍とはその名の通り小腸にできる腫瘍です。腫瘍の種類としてはリンパ腫、腺癌、消化管間質腫瘍が多いです。

症状は腫瘍の種類によって異なりますが、腫瘍から出血している場合はタール便(炭のような真っ黒な便)、貧血、腸閉塞による嘔吐、腸穿孔による細菌性腹膜炎に伴う腹痛や食欲低下などが挙げられます。

いずれにしても症状のみで小腸腫瘍を確定することはできません。腫瘍の有無の確認には超音波検査が必要になります。

診断

上述のように、診断には超音波検査が有用です。その他、栄養の吸収状態や貧血の程度の確認のために血液検査も必要になります。

下血のような見た目的に激しい出血よりもタール便のほうが圧倒的に出血量が多く、来院時点で重度の貧血を呈していることがあります。貧血の程度によっては輸血が必要になります。

本症例は超音波検査にて腸閉塞所見はありませんでしたが、明らかな腫瘍性病変を認めました。

また、エコーを見ながら針吸引検査(FNA)にて腫瘍の種類を調べようとしましたが、貧血や血小板低下が重度で、検査による大量出血の可能性があったため実施は困難と判断しました。

内視鏡下での生検によって確定診断を得ることも可能ですが、全身麻酔が必要となります。

治療(手術写真があります)

針吸引検査でリンパ腫と診断された場合には化学療法が適応になる場合もありますが、それ以外では基本的に手術による外科切除が適応となります。

本症例は重度の貧血により緊急性が高かったため、輸血を実施後早期に手術を行いました。

この先手術写真があります。

術中写真です。丸い腫瘍がおわかりいただけるかと思います。

この腫瘍だけを取ることはできないので、その周囲の腸ごと切除します。

腫瘍を切除後、腸吻合を実施しました。

切除縁に腫瘍細胞が残存していると吻合箇所が裂開してしまう可能性があるため、腫瘍がある部分よりも広く切除し、腹腔ドレーンを留置して手術終了です。

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切除した腫瘍です。

こちらは病理検査会社に提出し、腫瘍の詳細を調べてもらいます。

腫瘍の種類やグレードによって、再発や転移予防のために抗がん剤を組み合わせることもあります。

合併症

手術の合併症として最も多いのは吻合部の裂開による細菌性腹膜炎です。未熟な手術手技によって起きることもありますし、先述のように腫瘍細胞が切除縁に残存している場合も裂開します。

裂開してしまった場合は再手術が必要となります。

術後3日後から5日後が最も裂開が多い時期となりますので、5日間は入院下での観察をします。