骨盤骨折

骨盤とは

骨盤は、腸骨、寛骨、坐骨、恥骨という4つの骨をまとめた言い方です。

骨盤は、姿勢を安定させたり、後ろ足の力を体幹に伝えたり、内臓の保護といった様々な役割があります。

骨折の部位によっては歩けなくなったり、放置すると排尿や排便に支障が出る可能性があります。

腸骨体骨折

今回の症例は外に出る猫ちゃんで数日前から右後肢の負重性跛行(びっこを引くこと)がありました。レントゲン撮影の結果、骨盤を構成する骨のうち腸骨が折れていました。おそらく交通事故だと思われます。

仰向けで撮影しているため、向かって左側が体の右側になります。したがって右腸骨骨折となります。

反対側は手術計画のための計測がしてあります。

既に骨が若干内側に入り込んでしまっていますが、このまま放置すると萎縮した筋肉に引っ張られる形でどんどん内側に入り込んでいき、最終的に骨盤狭窄となり重度の排便障害を起こします。

手術

手術までの時間が数日延びるだけで筋肉が萎縮し、折れた骨の整復がどんどん困難になっていきます。

そのため本症例は内臓に異常がないことを確認し、来院した翌日に手術となりました。

骨折の整復にはプレート法、髄内ピン法、ラグスクリュー法などがありますが、骨盤骨折に関してはほとんどがプレート法による整復が適応となります。

プレート法はその名の通り、骨折部位の前後を金属製のプレートで固定する方法です。

この先手術写真があります。

筋肉の間から骨盤にアプローチを行い、骨折部位を特定します。この写真はある程度折れた骨同士を近づけているため骨折線がわかりづらいですが、最初は骨同士がかなり離れてしまっていたため、周囲の結合組織を剥離して骨片を引っ張り出しました。

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骨同士の位置をなるべく正確に合わせて、金属製のプレートで固定します。T字型のプレートを用い、骨折線の前後にスクリューを3本ずつ入れて固定しました。

術後のレントゲンです。骨盤の形に合わせてプレートを曲げてあります。

術後は翌日から普通に歩けるようになりますが、骨の癒合が認められるまでは安静に過ごしてもらいます。

プレートで固定しているとはいえ、激しい運動を行うとその力に負けてプレートが折れたり、プレートを固定しているスクリューが緩んでしまうことがあります。

特に猫ちゃんは後肢の力が非常に強いため、ジャンプなどをしないようにケージレストを指示しています。

骨折の治療は、骨の種類や折れ方、動物種によってさまざまな方法やインプラントが必要となります。

当院では常に多種類のインプラントを用意しており、状態が安定していれば即座に手術が行える体制を整えております。

骨折に限らず跛行診断には力を入れておりますので、お困りの際はぜひ当院でお越しください。