自発性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)

SCCEDsとは

自発性慢性角膜上皮欠損や難治性角膜潰瘍と呼ばれる病態です。

目の表面に様々な要因で傷がついてしまう角膜潰瘍の病態の一種です。

その名の通り、自発性(特に原因もなく勝手に)で、慢性(繰り返しやすい)、難治性(治りにくい)とされています。

治りにくいとされている原因は、角膜の表面を覆っている上皮が基底膜から浮いてしまい、正常な傷の治癒過程を阻害してしまうからです。

イメージとしては、日焼けをした後に皮膚がペラペラとめくれてくるかんじです。

角膜の傷が上皮に現局している場合を上皮びらん、角膜実質まで及んでいる場合を角膜潰瘍と表現します。

診断

角膜潰瘍もSCCEDsも診断方法は同じで、フルオロセイン染色という特殊な染色を行うことで傷の有無を確認します。

肉眼的に傷のようなものがなくても、染色をすると傷が見つかることも多々あります。

その他に併発疾患がないかも確認するため、涙液量検査や眼圧検査、スリットランプ検査等の一通りの眼科検査を行います。

SCCEDsの特徴として、染色液が潰瘍部から上皮の下に染み込んでいく様子が観察されるということです。

内科的治療

一般的な角膜潰瘍の場合、抗生剤の頻回点眼が必須となります。

抗生剤が直接傷を治すわけではありませんが、潰瘍部で菌が増殖すると傷が広く深くなり、最終的に角膜穿孔にいたることがあるからです。

それに加え、アセチルシステイン点眼や人工涙液などを併用することが多いです。

上皮びらんの場合は浮いてしまった上皮を除去しないと、正常な上皮形成が行われません。

そのため、点眼麻酔後、滅菌綿棒で浮いてしまった上皮を剝がせるだけ剥がします。

飼主様から見ると傷を深くしているだけのように見えるかもしれませんが、綿棒で擦る程度で剝がれてしまう上皮なら剥がしてしまわないと余計に傷が治らなくなります。

通常の上皮びらんであればこの処置を点眼を組み合わせるだけで治ることが多いです。

この処置を繰り返しても潰瘍が治らない場合、いよいよSCCEDsが疑わしくなり、外科的介入を検討しなければいけません。

外科的治療

外科的治療は、あえて角膜に傷をつけることで上皮の接着を促す角膜点状切開術もしくは角膜格子状切開術を行います。

細い針を使用し、角膜を貫通しないように慎重に傷をつけていきます。本症例は格子状切開と点状切開を組み合わせています。

目の表面に無数の穴が開いています。

処置後は、眼瞼縫合を行います。

涙の中には傷を治す成分が多量に含まれているため、目を閉じた状態にすることで常に涙が潰瘍部に届くようにしてあげます。

眼の内側は半分ほど開けてあります。この隙間から点眼をすることができますし、角膜の状態を確認することもできます。

この状態で2週間ほど過ごしてもらい、抜糸をし、傷の治りを確認します。

治りが悪い場合は同様の処置を繰り返すこともあります。

まとめ

SCCEDsは原因がわかっておらず、どれだけ積極的に治療をしても再発することがあり得る病気です。

単純な角膜潰瘍でも、治療を間違えると角膜が貫通(角膜穿孔)し、失明することもあります。

角膜表面の傷が確認されたら翌日(遅くても2日後)には再診に来ていただき、再び傷の確認をさせていただきます。

治療反応が認められない、もしくは悪化している場合は、傷が治りにくくなるような背景疾患の有無やSCCEDsを鑑別にあげながら慎重に診断していきます。

目の病気は治療方針を誤るとあっという間に悪化し、取り返しのつかない状態になることがあります。

当院は様々な眼科疾患に対応することができる設備を整えております。

眼科疾患でお困りの際はぜひ一度当院にお越しください。