尿道腹壁瘻手術

解剖

泌尿器の解剖は以下の通りです。

今回紹介する手術は、尿道が種々の原因で使用できなくなってしまった場合に適応になります。

多くの場合は重度の尿道閉塞(他の記事で紹介した会陰尿道瘻でも治療困難な場合)、その他吻合不可能な重度の尿道断裂や、尿道腫瘍などに対して行います。

どんな手術?

尿道腹壁瘻とは、尿道を切断し、お腹の皮膚に直接開口させる手術です。

本症例は交通事故による尿道断裂でしたが、種々の検査より整復(尿道吻合)は難しいと判断し、尿道腹壁瘻手術に至りました。

この先手術写真があります。苦手な方はご注意ください。

尿道を切断後、皮膚から出しています。尿道にはカテーテルが挿入されています。

尿道が折れ曲がってしまわないように位置決めをします。

縫合後の見た目です。尿道開口部をピンセットで示しています。

術後早期は尿が縫合部に付着すると炎症が起き、尿道開口部が腫れて閉塞してしまうリスクがあるため、3日間尿道カテーテルを留置します。

手術3日後、炎症が引いたタイミングでカテーテルを抜去しました。

術後合併症

尿道が短くなるため、排尿のコントロールが難しくなり、持続的に尿が漏れる可能性があります。

また、尿道開口部に毛が生えると感染の原因となるため、定期的な毛刈りが必要です。

定期的に毛刈りをしても、尿道が短いため菌が侵入しやすく、膀胱炎や腎盂腎炎の原因となることもあります。

最大の合併症は、炎症で尿道開口部が閉塞してしまうことです。これは術後早期に起きることもあれば、数か月経ってから起きることもあり、その場合は再手術が必要となります。

ここまででお分かりの通り、合併症の多い手術のため、なるべくその適用は厳選し、やむを得ない場合のみ行うべきです。

会陰尿道瘻や今回の尿道腹壁瘻などをまとめて「尿路変更術」とも呼びますが、いずれの術式にしても尿道の正常な解剖ではなくなるため、安易に適用するべきではありません。

ですが手術をしないと助からない子がいることも事実です。

適用を見定める力、手術の腕が必要な手術ですが、お困りの際は当院にご相談ください。