緑内障に対する眼球摘出術
緑内障とは
緑内障とは、いろいろな原因で視神経が障害を受けてしまう病気です。
動物の場合はそのほとんどが眼圧の上昇によるものとされているため、緑内障=眼圧上昇のイメージが強いです。
眼圧とは、すごく簡単に述べると目を内側から押している力です。

赤丸で囲んだ房水がなんらかの原因で作られすぎたり、あるいは房水の排出経路が詰まったりすることで眼圧が上昇します。
眼圧が上昇すると視神経が圧迫され、治療が遅れると最終的には失明に至ります。
症状と診断
症状としては、目をしょぼしょぼさせたり(羞明)、涙の量が増えたり、結膜が充血したりと、眼圧上昇による痛みからくるものがほとんどです。
痛みが強い場合は元気や食欲が低下する場合もあります。
診断は、眼圧測定や隅角検査によって行います。正常な眼圧は25mmHg以下とされているため、それを超えていれば基本的には緑内障と診断されます。
緑内障には原発性(他に基礎疾患がなく、緑内障が単独で起きている場合)と、続発性(他の疾患によって二次的に緑内障が引き起こされている場合)があります。
内科的治療
原発緑内障の場合、眼圧降下の目薬や、利尿剤を使用し眼圧を低下させます。
続発緑内障の場合、基礎疾患の治療がメインになります。
共通していることは、とにかく早期に眼圧を下げるということです。
眼圧上昇から72時間以内に正常眼圧に戻さなければ失明するとされています。
また、片目が緑内障になった場合、もう片方の目も緑内障になる可能性が高いため、正常な目にも予防的に点眼を開始します。
内科的な治療に反応しない場合、外科的な治療に移ります。
外科的治療
外科的治療は、
・房水シャント
・眼球摘出
に分かれます。
房水シャントは房水の排出経路を作ることで眼圧を下げる手術です。
房水シャントに関しては実施症例とともに別項で紹介します。
眼球摘出は、眼圧コントロールがうまくいかず失明するだけでなく、慢性的な眼圧上昇により生活の質が低下している場合に行われる救済処置です。

麻酔中のため右目が閉じておりわかりづらいですが、慢性緑内障により左目が大きくなっています(牛眼)。
本症例は私が赴任する前に緑内障と診断されていましたが、眼圧降下治療に反応しておらず、常に眼圧が80mmHgを超えている状態でしたので、眼球摘出を行いました。

摘出した眼球です。

術後の外貌です。
術後すぐは縫合面が平坦になっていますが、時間の経過とともに凹んできます。
眼球摘出の合併症
眼球摘出術の主な合併症は、摘出した目の反対側の目の失明です。

眼球摘出中に目を引っ張りすぎると、視交叉が引っ張られ、反対側の視神経に障害が起き、失明します。
この合併症は犬よりも猫で起きやすいと言われています(視神経から視交叉までの距離が猫の方が短いため)。
緑内障に対する眼球摘出はあくまで救済処置のため、適応は慎重に見極める必要があります。