大腿骨遠位成長板骨折
解剖
大腿骨は、言わずもがな太ももの骨です。
では成長板とは何かというと、骨の中心と端っこ(骨端)の間にある軟骨部分で、骨を作っている場所です。
骨が成長するときは、骨全体が一様に伸びるのではなく、成長板という場所で骨を作り、骨を伸ばしています。

ビルを建てる時、屋上にクレーンが乗って作業をしているのを見たことがあると思います。すでに作った部分は伸びないけれど、上に上に階を重ねて伸びていきますよね?イメージとしてはそんなかんじです。
成長に伴い成長板は閉鎖し骨化していきますが、若齢時はまだ成長板が脆く、折れてしまうことがあります。
骨折の仕方にいくつかパターンがあり、その折れ方によって5つの型に分類されます(Salter-Harris分類)。

折れ方によって治療方法も変わってきますが、どちらにせよ手術が必要なことがほとんどです。
症例
今回の症例は2歳の猫ちゃんです。
2歳となると成長板は既に閉鎖しているはずですが、今回は残念ながら骨折してしまいました。


先ほど述べた分類でいくと、この骨折は「1型」となります。
完全室内飼いで事故の可能性はなく、なぜ骨折に至ったのかは不明でした。
手術
このままでは当然歩けないため、翌日手術を行いました。

私の人差し指のところに骨折線があります。画像は整復が終わった後の写真です。

通常は左右からピンを入れて終了となりますが、猫ちゃんは特に後肢の力が強いこと(=固定具が力に負けて折れやすい)、室内飼いにも関わらず骨折が起きてしまったことなどから固定強度を高めるために外側から追加でピンを1本入れています。
術後とまとめ
術後はジャンプを避けるためケージ内で安静を保ちつつ、少しずつ自分の力で歩くことが大事です。
骨は使わないと萎縮してしまいます(廃用性萎縮)。
成長板骨折は若齢で起こることが多いため、適切に整復すれば骨が癒合するのも早いです。
通常は1か月もすれば仮骨がしっかりでてきて安定性を増してくるため、それくらいから徐々に運動量を増やしていきます。
骨折は受傷から手術までのスピードが大事です。足を強く痛がっている場合、すぐに動物病院を受診してください。
すぐに手術ができないと言われた場合は、当院へご相談ください。


