
腎泌尿器科ってどんな診療科?
腎泌尿器科は、腎臓やおしっこのトラブルの原因疾患に対応する診療科です。
犬や猫の泌尿器系には、腎臓・尿管・膀胱・尿道といった尿をつくって排出するための器官があります。
これらの器官にトラブルが起こると、血尿や頻尿、排尿困難などの症状が見られるようになります。
泌尿器系の病気のなかには、投薬や食事療法で改善するものもありますが、中には外科手術が必要となるケースも存在します。
当院では、内科治療にとどまらず、泌尿器外科にもしっかり対応できる体制を整えています。
必要に応じて迅速に手術を行い、動物たちの健康を取り戻すお手伝いをしています。
代表的な病気
腎泌尿器科で扱う代表的な病気には、以下のようなものがあります。
膀胱炎
膀胱炎には、膀胱内に細菌が入り込むことで起こる感染性膀胱炎のほか、結石や腫瘍が原因で炎症を起こす場合もあります。
主な症状としては、頻尿や血尿、排尿時の痛みなどが挙げられます。
軽度の膀胱炎であれば抗生物質や食事療法で改善することもありますが、再発を繰り返したり、膀胱結石を伴ったりしている場合は、手術で原因を取り除く必要が出てきます。
膀胱炎を放置してした場合のリスクについてはこちらの記事もご覧ください。
犬の膀胱結石を放置するとどうなる?|治療しないリスクについて ...
尿管結石
尿管結石は腎臓から膀胱へ尿を運ぶ「尿管」に結石が詰まってしまう病気です。
特にシュウ酸カルシウムなどの硬い結石による閉塞は、食事で溶けないため早期の対応が求められます。
尿管結石により腎臓に尿が溜まると水腎症を引き起こし、腎機能が低下してしまうことも。
結石が自然に流れない場合は、尿管切開術やバイパス手術などの外科的対応が必要です。
犬の尿管結石についてはこちらの記事もご覧下さい。
尿道閉塞
尿道閉塞は、特に尿道の細い雄に多く見られる病気です。
尿道に結石や粘液栓が詰まることで尿が出なくなります。
尿道閉塞は放置すると腎臓の機能が低下するなどの命に関わる緊急疾患であり、早急に詰まりを解除しなければなりません。
カテーテルでの解除が困難な場合や、再発を繰り返す場合には、会陰尿道瘻形成術という外科手術を選択することがあります。
猫の尿道閉塞についてはこちらの記事もご覧ください。
雄猫が尿を出せない?|尿道閉塞の症状と緊急対応について | はやの ...

腎泌尿器の代表的な症状
腎泌尿器系のトラブルによって見られる代表的な症状をご紹介します。
血尿
血尿は尿に血が混じる症状です。
血尿が起こった時は、
- 膀胱炎
- 結石
- 腫瘍
などさまざまな原因が考えられます。
血尿は明らかな赤色の場合もあれば、茶色っぽい尿になることもあります。
血尿が出ている場合には、一時的なものと判断せず、早めの検査が大切です。
頻尿
頻尿は、おしっこの回数が多くなる症状です。
何度もトイレに行く、トイレの姿勢をとるが尿が少ししか出ていない、という場合には泌尿器の異常が疑われます。
頻尿の原因で多く見られるのは膀胱炎ですが、他にも腫瘍や神経障害、尿道狭窄などが原因となっていることもあります。
犬の尿の回数についてはこちらの記事もご覧ください。
犬の尿の回数が多い・少ないのは異常?|原因や対処法について解説
尿が出ない
尿が出ないというのは、緊急性の高い症状のひとつです。
特に尿道閉塞などで尿の通り道が詰まっている場合には、数時間で命に関わる状態になることも。
尿が出ていないと思ったら、早急に動物病院で処置を受ける必要があります。

代表的な腎泌尿器の手術
当院で実施している腎泌尿器外科手術の一部をご紹介します。
膀胱切開術
膀胱切開術は膀胱内の結石を取り除くための手術です。
溶けにくい種類の結石や、大きすぎて自然に排出できない結石がある場合に実施します。
手術は以下のような流れで進行します。
- 血液検査やレントゲン、超音波検査で全身状態と結石の位置を確認
- 麻酔をかけて膀胱を切開し、結石を摘出
- 膀胱・腹部を縫合し、回復を見守るために数日間入院管理
術後は排尿の状態や感染予防の管理が重要になるため、入院期間は通常2〜5日程度です。
膀胱を切開して中の結石を取り除くため、術後に尿もれを起こすこともありますが、ほとんどの場合には元の状態に戻ります。
猫の膀胱切開による膀胱結石摘出についてはこちらの記事もご覧ください。
猫の膀胱に結石?|摘出手術が必要になるケースと治療の流れ ...
会陰尿道瘻形成術
会陰尿道瘻形成術は、再発性の尿道閉塞に対して実施される手術です。
尿道の細くなりやすい部分を切除し、広く短い尿道口を新たに作ります。
手術に適応するかどうかの判断が必要ですが、特に再発を繰り返す雄猫において、QOLの維持や命を守るために検討される手術の一つです。
猫の会陰尿道瘻形成術についてはこちらの記事もご覧ください。
当院は腎泌尿器外科にも対応しています
腎泌尿器の病気には内科治療だけでは対処が難しいケースもあります。
当院では、診断から手術、そして術後管理まで一貫した泌尿器外科の対応を行っております。
愛犬・愛猫の排尿に関する異変があれば、どうぞお早めにご相談ください。
腎泌尿器科の症例紹介
猫が膀胱破裂?手術になるって本当?|原因・症状・治療の流れを解説New!!
猫の膀胱破裂は、交通事故や高所からの転落など、強い衝撃によって起こることが多い非常に重篤な状態です。
命に関わる危険もあるため、すぐに適切な処置が必要になります。
今回は「猫の膀胱破裂」に関してわかりやすく解説します。
犬が排尿後にうろうろしている?|考えられる原因と対処法を獣医師が解説
「犬が排尿後にトイレの周りをうろうろする」
「排尿後に落ち着かない」
そんな様子が見られるのは、犬の泌尿器系に何かしらの異常が起きているサインかもしれません。
この記事では犬が排尿後にうろうろする原因と、考えられる病気や治療法について詳しく解説いたします。
犬のオスの陰部腫れは腫瘍が原因?|考えられる腫瘍と注意したい他の異常
犬のオスの陰部(陰茎や包皮)に腫れが見られたとき、腫瘍の可能性が気になるところです。
しかし、腫瘍かどうかは見た目だけで判断することが難しく、他の病気との区別もつきにくい場合があります。
今回は、犬のオスの陰部にみられる腫れのうち、腫瘍が疑われるケースや、他に注意すべき異常について解説します。
メス犬の陰部が腫れているのは腫瘍が原因?|治療法も含めて解説
「メス犬の陰部が腫れている気がする」
このような異常に気づいた飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、メス犬の陰部に腫れが見られたときに考えられる疾患と、検査・外科手術を含む治療法について解説します。
猫の膀胱結石が再発したら?|原因と再発防止のための外科手術や治療法
猫の膀胱結石を手術で取ったのに、また石ができてしまったという経験がある飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
猫の膀胱結石は、治療後も再発することが少なくありません。
とくに体質や生活環境によっては、数カ月〜数年のうちに再び膀胱内に結石が形成されるケースもあります。
今回は、猫の膀胱結石が再発する原因や予防のポイント、再発時の治療方法について解説します。
犬の尿道腫瘍で尿が出なくなる?|原因・検査・外科的治療法について解説
犬の尿が出なくなる病気には、膀胱炎や尿路結石などさまざまな病気が考えられます。
そのうちの一つに尿道腫瘍があります。
尿道に腫瘍ができると、尿の通り道が物理的に狭まり、やがて完全に閉塞してしまうことも。
今回は、犬の尿道腫瘍によって尿が出ない状態になる仕組みや、外科的治療を中心とした対応方法について解説します。
猫の排尿困難が老猫で見られたら|考えられる病気と外科手術を含む治療法
老猫がおしっこをしようとするのに出ないことがあります。
老猫の排尿困難は放置すると急性腎障害や膀胱破裂など命に関わる状態に進行する可能性があり、早急な診断と治療が必要です。
今回は老猫の排尿困難で考えられる代表的な病気と、外科手術を含めた治療法について解説します。
犬の神経原性排尿障害とは?|外科手術が適応となるケースと治療の流れについて
犬の排尿障害を起こす病気というと、結石や感染症を思い浮かべる方が多いかもしれません。
たしかに、犬の泌尿器科において、結石や感染症はよく見られる病気です。
しかし、犬に無尿や尿失禁などの排尿障害が見られる場合、その原因として神経系の問題が関わっていることもあります。
今回は犬の神経原性排尿障害について紹介し、外科手術が適応となるケースと治療の流れを詳しく解説します。
犬のおしっこが出るけど少ないのは病気?|原因や治療法について解説
「何度も排尿しようとするけれど、少ししか出ていないように見える」このような排尿の異常に気づいた飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
犬のおしっこの量が「出るけど少ない」状態が続いている場合、泌尿器に何らかの異常が起きている可能性があります。
今回は、犬のおしっこが出るけれど量が少ないときに考えられる病気や、その治療法について解説します。
猫の尿道狭窄とは?|外科手術が必要なケースと手術の方法について
猫の尿道狭窄という病気をご存知ですか?
尿道狭窄とは、なんらかの原因により尿道が狭くなってしまった状態のことです。
症状や原因はさまざまですが、重症化すると命に関わることもあり、注意が必要となります。
今回は猫の尿道狭窄と、その治療方法の1つである外科手術について詳しく解説します。










