犬の下顎骨を全摘出したメラノーマ症例|腫瘍の進行と治療の実際

下顎骨切除の種類

別記事にて下顎骨片側亜全摘出術の内容を記述しましたが、下顎骨切除にはいくつかの術式が存在します。

「亜全摘」はほぼ全部という意味になり、およそ2/3以上を切除する場合を指すことが多いです。

それ以下は「部分摘出」、全ての場合は「全摘出」となります。

今回は右側の下顎骨の全摘出を行いましたので、ご紹介します。

メラノーマ(悪性黒色腫)

メラノーマは犬の口腔内悪性腫瘍で最も発生が多いとされています。

似たような言葉で、「メラノサイトーマ」と呼ばれるものでありますが、こちらは良性腫瘍となります。

メラノーマは非常に悪性度が高く、診断時にはリンパ節や肺への遠隔転移が始まっていることも多い腫瘍です。

症状としては、口からの出血、口臭、顎の腫れなどですが、腫瘍に特異的な症状というわけではないので、歯周病かと思って放置していたら実は悪性腫瘍だったというパターンも珍しくないです。

黒色腫というくらいなので、色が黒いことが多いですね(違う場合もあります)。

犬の右下顎にあるメラノーマ

丸で囲っているところが腫瘍です。第2前臼歯付近から、後ろ側は第2後臼歯付近まで覆っているかなり大きな腫瘍でした。

腫瘍表面から出血しているため赤色に見えますが、腫瘍本体は黒いです。

余裕をもって切除しなければいけませんので、右下顎骨全切除が適応と考えました。

右下顎骨全切除術

いきなりですが、手術の写真です。

苦手な方はご注意ください。

犬の右下顎のメラノーマを除去した様子

切除が終わりました。

除去したメラノーマ

こうして見るとかなり大きな腫瘍ですね。

メラノーマ除去後の犬の様子

術後の外貌です。

右唇が内側に入ることで、舌は右側に少し出てしまいますが、基本的に飲食に問題はありません。

縫合部が癒合した後は、転移や再発予防のために抗がん剤を使用することが勧められます。

まとめ

高齢動物で口から出血や口臭があるとき、一般的には歯周病が原因となっていることが多いです。

しかし、あまりにも出血が多い場合や口が腫れている場合は腫瘍の可能性もあります。

軽い症状でも様子見をせず、動物病院を受診するようにしましょう。

腫瘍が小さい段階で手術ができれば、切除範囲も小さくて済みますし、その分動物にかかる負担も少なくて済みます。

腫瘍外科も当院におまかせください。