犬の肥満細胞腫に手術は必要?|皮膚型を中心に治療の基本を詳しく解説
犬の肥満細胞腫という腫瘍をご存知でしょうか。
犬の肥満細胞腫には、皮膚や皮下に発生する「皮膚型」と、内臓に発生する「内臓型」があります。
犬の皮膚型肥満細胞腫は、皮膚にできる悪性腫瘍のなかでも最も多くみられる腫瘍のひとつです。
犬の皮膚型肥満細胞腫の治療の基本は外科手術となります。
「手術が必要」と聞くと、不安になる飼い主様も多くいらっしゃるかと思います。
しかし肥満細胞腫は適切な治療を実施すれば、完治まで見込める可能性がある腫瘍です。
本記事では、犬で最も多くみられる「皮膚型肥満細胞腫」を中心に、手術治療について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、肥満細胞腫の手術について知見を深めてください。

犬の肥満細胞腫とは?
肥満細胞腫は、犬の皮膚腫瘍のなかでも多く見られる悪性腫瘍のひとつです。
肥満細胞とは本来はアレルギー反応や炎症に関与する細胞ですが、これが腫瘍化するとさまざまな問題を引き起こします。
犬の肥満細胞腫は皮膚にできる皮膚型と内臓にできる内臓型がありますが、多くは皮膚型です。
皮膚型の肥満細胞腫は皮膚や皮下の表面にしこりができることが多く、リンパ節、肝臓、脾臓といった他の臓器に転移することもあります。
肥満細胞腫は以下の犬種で特に発生率が高いとされています。
- パグ
- フレンチ・ブルドッグ
- ゴールデン・レトリーバー
- ラブラドール・レトリーバー
ただし、どの犬種・年齢でも発生する可能性があるため注意が必要です。
なぜ皮膚型肥満細胞腫は「手術が必要」と言われるのか?
犬の肥満細胞腫の治療には、
- 外科手術
- 放射線治療
- 内科治療
がありますが、治療の第一選択は全身麻酔をかけて腫瘍の切除をする外科手術です。
その理由をそれぞれ詳しく解説していきましょう。
完全切除ができれば治癒が期待できる
肥満細胞腫は、初期段階で完全に切除できれば再発や転移のリスクを大きく下げられる腫瘍です。
特に低グレード(悪性度が低い)であれば、手術のみで完治する場合が多いです。
薬や経過観察だけでは根治できない
犬の肥満細胞腫は自然に消えることはなく、放置すると以下のようなリスクがあります。
- 腫瘍が急に大きくなる
- 腫瘍が潰瘍化する
- 内臓やリンパ節に転移する
そのため「腫瘍を取り除くこと」が重要となります。
肥満細胞が放出する物質による全身症状を防ぐ
肥満細胞は、ヒスタミンやヘパリンといった物質を放出し、
- 皮膚の赤み、腫れ
- 胃潰瘍
- 嘔吐・下痢
- 出血傾向
- アナフィラキシー様反応
といった症状を引き起こすことがあります。
手術によって腫瘍を取り除くことで、これらのリスクを減らすことが出来るのも重要なメリットです。

手術が特に強くすすめられるケース
以下のような場合は、手術が第一選択となる可能性が高いです。
- 腫瘍が皮膚・皮下に限局している
- 画像検査で明らかな転移がない
- 全身状態が安定している
- 低グレード(悪性度が低い)の可能性がある
なるべく早期の手術に実施することで、予後を良好にする可能性があります。
手術に慎重な判断が必要なケース
以下のようなケースでは、手術単独では不十分、または別の治療を組み合わせることがあります。
- 高グレード(悪性度が高い)の可能性がある
- すでにリンパ節や内臓に転移がある
- 顔、肛門周囲、四肢末端など切除が難しい部位に腫瘍がある
- 高齢や持病により全身麻酔のリスクが高い
このような場合でも、手術に抗がん剤や分子標的薬などによる治療を組み合わせて実施されることもあります。
犬の皮膚型肥満細胞腫の手術の特徴
犬の皮膚型肥満細胞腫の手術の特徴として、切除範囲が広いことがあげられます。
肥満細胞腫は、見た目以上に周囲に腫瘍細胞が広がっていることが多いのが理由です。
- 腫瘍の周囲2~3cm以上を切除する
- 深さは筋肉の層まで切除する
上記のように広いマージン(切除域)を取って腫瘍が切除されます。
切除範囲が広いと不安になる飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
しかし腫瘍をしっかり取り切ることで、手術のみで完治できる可能性が高くなります。
手術後に必要な追加治療
肥満細胞腫の切除手術を受けたあとには、摘出した腫瘍は必ず病理検査に出すことが重要です。
病理検査では以下のような項目を確認します。
- 腫瘍のグレード(悪性度)
- 切除が完全だったか(マージン評価)
この病理検査結果によって、追加治療が必要かどうかが決まります。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
経過観察のみ
腫瘍が低グレード(悪性度が低い)で完全切除できている場合は、追加治療は必要とせず経過観察になる場合が多いです。
新たな病変の形成がないか、動物病院で経過を見ていきます。
抗がん剤治療
以下のようなケースは追加治療として抗がん剤の実施が行われる場合があります。
- 高グレード(悪性度が高い)
- 不完全切除
- 転移が確認された場合
抗がん剤は副作用が大きくでる場合もあるので、慎重に経過を見ながら実施されます。
分子標的薬
分子標的薬は、変異を起こした分子をターゲットに作用する薬であるため、抗がん剤より副作用が少ないとされています。
効果があるかどうかは治療前にc-kit遺伝子変異の有無の検査をすることで分かります。
放射線療法
手術で腫瘍が完全に切除できていない場合は、残った腫瘍細胞を根絶させるために放射線治療を行う場合もあります。
放射線療法は、局所の再発の予防や、手術が不可能な肥満細胞腫を縮小させたりする効果があります。
犬の肥満細胞腫の予後
犬の肥満細胞腫は
- 病理組織のグレード
- 臨床症状
- 完全切除の有無
によって大きく異なります。
皮膚型の場合、しこりが手術で取り切れていれば予後は良好です。
転移がなければ手術による根治率は80〜90%程度とも言われています。
しかし悪性度が高い場合は、適切な治療を実施しても平均生存期間が6ヶ月程度とも言われているため早期治療が重要です。
また肥満細胞腫は再発だけでなく新たに病変が形成される場合もあります。
定期的な健診や、新しいしこりがないか日常的に確認していくことで、早期発見することができます。

まとめ
犬の肥満細胞腫はよく見られる腫瘍ですが、早期の治療で完治も可能です。
皮膚型の肥満細胞腫の治療は「広範囲な外科手術」が基本となります。
皮膚のしこりを見つけたら、様子を見ずに早めに動物病院を受診しましょう。
当院は外科手術に力をいれています。
愛犬が肥満細胞腫と診断された場合のご相談や、手術がご希望の場合など、いつでも当院にご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q1.犬の肥満細胞腫は、必ず手術をしなければいけませんか?
犬の皮膚型肥満細胞腫は、外科手術が最も治療効果の高い方法とされています。
初期の段階で完全に切除できれば、手術だけで完治が期待できるケースも少なくありません。
放置すると転移や全身症状のリスクが高まるため、早めの手術がおすすめです。
Q2.肥満細胞腫の手術は、どれくらい大きく切る必要がありますか?
皮膚型の肥満細胞腫は見た目以上に周囲へ広がっていることが多いため、腫瘍の周囲を広めに切除します。
一般的には、腫瘍の周囲2〜3cm以上、深さは筋肉の層まで切除することが推奨されています。
しっかり取り切ることで、再発や追加治療のリスクを下げることができます。
Q3.手術後に抗がん剤や薬の治療は必ず必要になりますか?
手術後の追加治療が必要かどうかは、病理検査の結果によって判断されます。
低グレードで完全切除できていれば、経過観察のみで済むことも多いです。
悪性度が高い場合や切除が不十分な場合には、抗がん剤や分子標的薬を検討します。
熊本県玉名市六田
はやの動物病院


