犬の腎臓摘出とはどんな手術?|適応や注意点を詳しく解説
犬も人と同様に病気や損傷のある腎臓を外科的に取り除く「腎臓摘出」を行うことがあります。
「腎臓はとってしまっても大丈夫なの?」
「手術のあとはいつも通りの生活を送れる?」
「手術後はどんなことに気をつけたらいいの?」
愛犬に腎臓摘出が必要となった飼い主様は、このように大きな不安を感じるかと思います。
適切な術前検査と管理の元で行われる犬の腎臓摘出は、愛犬の命を守るために有効な治療法です。
この記事では犬の腎臓摘出が適応となるケース、術後の注意点などを詳しく解説いたします。
ぜひ、最後までお読みいただき犬の腎臓摘出について知見を深めてください。

腎臓の役割
犬には左右に1つずつ、合計2つの腎臓があります。
腎臓は生命維持に欠かせない重要な臓器で、主な働きは以下のようなものがあります。
- 老廃物の排泄(尿の生成)
- 体内の水分・電解質バランスの調整
- 血圧の調整
- 赤血球産生を促すホルモン(エリスロポエチン)の分泌
- ビタミンDの活性化
そのため、腎臓の機能が低下すると全身にさまざまな影響が出るため注意が必要です。
腎臓摘出が必要になるのはどんなとき?
犬の腎臓摘出は、2つある腎臓のうち1つを切除する手術です。
腎臓が重度に障害され、温存することがかえって全身状態を悪化させる場合に腎臓摘出が実施される場合があります。
通常は片側の腎臓が機能していれば生活可能です。
ここでは腎臓摘出が必要になる具体的なケースを解説していきます。
腎臓腫瘍
犬の腎臓摘出が必要となる疾患で、代表的なものが腎臓腫瘍です。
腫瘍が片側に限局している場合は摘出が選択されます。
腎臓腫瘍には主に以下のようなものがあります。
- 腎細胞癌
- 移行上皮癌
- リンパ腫
- 転移性腫瘍
腎臓腫瘍は肺や骨など他の臓器への転移リスクが高く、悪性度が高い腫瘍のため早期発見・早期治療が重要です。
また良性の腎臓腫瘍でも、大きくなることで破裂のリスクを伴うことがあります。
そのため摘出が検討される場合もあります。
重度の外傷
外傷によって腎臓が損傷し、元に戻らないと判断された場合には腎臓摘出の適応となります。
交通事故や高所からの落下などで腎臓から出血や尿の漏出がある場合は、命の危険がある緊急性が高い状態です。
損傷が激しい腎臓を摘出することで、命を守ります。
水腎症
水腎症も腎臓摘出の対象となる代表的な疾患です。
水腎症とは尿管の閉塞や先天的な異常により、腎臓内に尿が溜まり著しく腎臓が腫大してしまっている状態をいいます。
放置すると感染のリスクも高まるため注意が必要です。
水腎症により腎臓の組織が著しく破壊され、機能回復が見込めない場合に腎臓摘出が検討されます。
腎膿瘍
腎膿瘍とは細菌感染により腎臓に膿がたまった状態です。
原因は腎盂腎炎の悪化や、尿管結石などさまざまですが、通常は抗生剤による内科治療の適応となります。
しかし、重度の場合や抗生剤が効かず腎臓が壊死している場合には、全身への感染拡大を防ぐために腎臓摘出の適応となります。

腎臓摘出手術前の注意事項
腎臓摘出の実施は、温存する側の腎臓が正常に機能していることが前提です。
そのため腎臓摘出を計画する際には事前の検査がとても重要となります。
- 血液検査
- 尿検査
- レントゲン検査
- 超音波検査
- CT検査
- 血圧測定
上記の検査を組み合わせて、残る腎臓が正常に機能していることの確認が必須です。
健康な犬であれば、腎機能の70%程度は片側の腎臓で代償可能とされています。
しかし、すでに慢性腎臓病の兆候がある場合は、より慎重な管理が必要です。
その他には、
- 腫瘍の転移の有無
- 年齢と全身状態
- 術後の生活の質(QOL)
- 手術以外の選択肢の有無
などを総合的に判断して、手術の実施を決定します。
犬の腎臓摘出のリスク
犬の腎臓摘出の際に伴うリスクは主に以下のようなものがあります。
- 麻酔リスク
- 出血
- 術後の急性腎不全
- 感染
- 血圧異常
特に注意すべきは、残った腎臓の機能不全です。
しかしこれらのリスクの多くは術前の検査と、手術中・術後の適正な管理で防ぐことができます。
術後の生活
犬が腎臓摘出を実施したあとも、多くの犬は普通の生活が可能です。
ただし、残った腎臓に負担をかけないように日常生活のなかで注意していく点がいくつかあります。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
定期検査
腎臓摘出を受けたあとも3〜6ヶ月ごとに定期的に病院に通い、状態の確認を行うことが重要です。
- 血液検査
- 尿検査
- 血圧測定
- 画像検査
定期的に動物病院を受診し、上記のような検査を組み合わせて実施し、残った腎臓の機能が維持されているか確認していきます。
腎機能低下の傾向がある場合は、それに対しての治療を実施していきます
また、腫瘍の場合は転移や再発がないかを注意深く見ていきます。
食事管理
術後の食事管理もとても重要です。
必ずしも腎臓用療法食が必要なわけではありませんが、なるべく高タンパク・高リンの食事は避けましょう。
残っている腎臓の状態や体調・年齢に合わせて、獣医師と最適な食事を相談して決めていきましょう。
脱水を避ける
脱水は腎機能低下につながる要因のひとつです。
- 常に新鮮な水を用意する
- ウェットフードも併用する
- 暑さ対策など温度管理を徹底する
などの工夫をして、飲水をしっかりできるようにしていきましょう。

まとめ
犬の腎臓摘出は、愛犬の命を救うための重要な手術です。
片側の腎臓の機能が正常であれば、多くの犬が通常の生活を送ることが可能となります。
腎臓摘出に対し正しい知識をもち、手術の適応となるかよく獣医師と相談することが重要です。
当院は泌尿器外科に力を入れています。
犬の腎臓の手術を検討している場合、犬の腎臓の健康が気になる場合などいつでも当院にご相談ください。
よくあるご質問(Q&A)
Q.犬は腎臓を1つ摘出しても生活できますか?
A.犬は左右に2つの腎臓をもっており、片側の腎臓が十分に機能していれば日常生活を送れることが多いです。
ただし、残った腎臓の状態によって経過は異なるため、術前検査と術後の定期的な確認が大切になります。
Q.腎臓摘出のあとに気をつけることはありますか?
A.犬の腎臓摘出後は、残った腎臓に負担をかけないように水分摂取や食事内容に配慮することが重要です。
また、血液検査や尿検査などを定期的に行い、腎機能の変化を早めに把握することが勧められます。
Q.腎臓摘出にはどのようなリスクがありますか?
A.犬の腎臓摘出では、麻酔や出血、術後の腎機能低下などが起こる可能性があります。
これらのリスクは術前の詳しい検査や、手術中・術後の適切な管理によって軽減できる場合が多いです。
熊本県玉名市六田
はやの動物病院

