犬や猫の根尖膿瘍(歯根膿瘍)とは?|症例をもとに治療と注意点を解説

歯の解剖

犬の歯は上顎が20本、下顎が22本生えています。

犬の歯の解剖学イラスト

図のように、切歯、犬歯、前臼歯、後臼歯の大きく4つにわかれます。

元々は、切歯で獲物を捕まえ、犬歯で肉を割き、臼歯で飲みこめる大きさに砕くという役割がありましたが、ドッグフードを食べるうえではそういった役割はほとんど機能していません。

ドッグフードは飲みこんでいるわけですね。

カリカリと音がしていることもありますが、歯で加えているだけで、ほとんど噛んでいません。

たまにわんちゃんが吐くとフードがそのままの形を保っていることがこの事実を物語っています。

もちろん歯があるに越したことはないですが、病気の原因となっている歯があり、修復不能な場合は基本的に抜歯がすすめられます。

歯周病

2歳以上のわんちゃんの実に90%以上が歯周病に罹患していると言われています。人も歯周病は多いですね。

歯周病は世界で一番多い感染症としてギネス世界記録にも載っているくらいです。

歯周病にも程度があるため、定期的に歯磨きをし、軽度の歯周病の段階で留めることができれば大きな問題になることはほとんどありません。

しかし、歯石を放置すると歯石の表面で菌が繁殖し、歯肉や顎の骨を溶かしてしまいます。

上顎骨が溶けると鼻と貫通したり(口腔鼻腔瘻の記事参照)、本症例のように根尖膿瘍を引き起こします。

根尖膿瘍

歯石がつき、菌が歯の根っこで繁殖すると、菌は逃げ場を探します。

その逃げ場として最も多いのが、目の下です。

犬が根尖膿瘍を起こして目の下に炎症が起きている様子

眼の下に膿が溜まって膨らみ、やがて上の写真のように破裂します。

抗生剤を使うと一時的に改善することがありますが、根本の原因となっている歯を改善しないことにはいつか再発します。

再発のたびに痛みや発熱に伴い食欲が低下してしまいますし、抗生剤を多用すると薬剤耐性を作ってしまうので、抜歯と抗生剤の同時使用が原則となります。

根尖膿瘍を起こした犬の右側の歯

口を右側から見た写真です。

上顎の奥歯に特に大量に歯石がついています。

多くの場合、根尖膿瘍の原因となるのは奥歯(臼歯)です。

原因となりうる歯は抜歯をします。

犬の根尖膿瘍の原因となる歯を抜歯した写真

処置後の写真です。

第一後臼歯はそこまで酷くなかったので抜歯をせず、第3・4前臼歯は抜歯をしました。

また、他の歯はすべて超音波スケーラーによる歯石取りおよびポリッシング(表面を磨いて歯石がつきにくくなるようにする処置)を行いました。

残っている歯が原因で再び根尖膿瘍を起こす可能性もあるため、自宅で歯磨きをし、これ以上歯周病が進行しないように努めていただくことが肝要になります。

まとめ

根尖膿瘍は高齢のわんちゃん(特に小型犬)に非常に多い病気です。

放置すると顎の骨が溶けて巨大な口腔鼻腔瘻(口と鼻が貫通してしまう病気;別記事参照)を形成したり、重度の感染から敗血症を引き起こしたりと、命に関わる可能性もあります。

本来は定期的な歯磨きで歯周病にならないようにするのが賢明なのですが、諸々の事情でなかなか歯磨きができないことも少なくありません。

今回のような歯周病に伴う合併症が起きた場合には様子見をせず、早期に積極的な治療をすることをおすすめします。

当院は歯科処置にも力を入れております。

歯のことで気になることがありましたら、いつでもご相談されてください。