犬や猫がひもを飲み込んだら危険?|腸閉塞の症例と外科対応について解説

腸閉塞とは

腸閉塞とは、その名の通り腸が様々な原因で閉塞してしまうことを指します。

原因として最も多いものは異物の誤食による閉塞です。

その他、腫瘍や腸重積(腸が腸の中に入り込む状態)が原因として挙げられます。

誤食が原因となることが多いため、発症年齢としては若齢の場合が多いです。人間も動物も幼い頃はなんでも口にしてしまうんですね。

誤食してしまうものはボールやおもちゃなど様々ですが、最も厄介なのが今回紹介する「ひも状異物」です。

その名の通りひも状の細長い異物ですが、ひもの一端が胃の出口などに引っ掛かり、もう一端は腸に流れて行ってしまうことで、逆に腸が手繰り寄せられアコーディオンのようになり、最終的に閉塞を起こします。

アコーディオン

こんな感じで蛇腹のようになります。

紐の長さによっては、舌の根本から肛門までつながって閉塞を起こしていた事例も存在し、手繰り寄せられた腸が紐と擦れることで穿孔(腸に穴が開くこと)を起こすこともあるため、非常に厄介というわけです。

ちなみに腸重積も若齢(ほぼ1歳以下)で多く、逆に腫瘍による閉塞は高齢になってからがほとんどです。

症状と診断

腸が閉塞し通過障害を起こすため、頻回の嘔吐、元気や食欲の低下が最も多いです。何も食べてなくても胃液や腸液が貯留し、吐き気を催します。

胃腸炎や膵炎と症状が似ていますが、腸閉塞の場合は治療が外科、胃腸炎や膵炎の場合は治療が内科となり全く異なるため、診断を誤ると非常に危険です。

肝心の診断方法は、基本的には超音波検査で診断できます。

以前は造影剤(バリウムなど)を飲んでからレントゲンを撮り、通過障害や異物がないかを確認していましたが、診断精度がそこまで高くなく、時間もかかり(エコーなら10分程度ですが造影レントゲンだと数時間)、かつ無理に造影剤を飲ませることで誤嚥性肺炎などのリスクもあるため、最近はあまり行っておりません。

ひも状異物で腸閉塞を起こしている腸のエコー写真

今回の症例の超音波画像です。

腸液の貯留と、その先にひも状の異物があり、腸がぐねぐねと蛇腹のようになっている様子が観察されました。

超音波検査のデメリットは、閉塞直後だと腸液の貯留が認められず閉塞が分かりづらい可能性があることと、検査者の技術によって診断精度に大きな差が出てしまうことが挙げられます。

他院で検査をしたものの原因がわからず点滴を繰り返していたが症状が改善せず、当院で検査をしたところ診断がついた例もあります。

治療方法(手術)

治療方法は、閉塞している異物を除去しないことには絶対に改善しないため、手術しかありません。

通常の異物であれば腸切開(異物のある場所をわずかに切って異物を摘出すること)で摘出できますが、閉塞時間が長く腸が壊死していたり、腫瘍が原因の場合はその部分の腸をまるごと切除して腸をつなぎ合わせる「腸吻合」が適応となります。

ひも状異物の場合、一か所だけ切開して異物を摘出しようとすると蛇腹状になっている腸を引っ張ることになり、医原性に腸穿孔を引き起こしてしまう可能性があるため、腸を数か所切開し、異物を切断して細かくしながら摘出する必要があります。

以下、手術写真です。

ひも状異物で腸閉塞を起こした腸の手術写真

思ったより蛇腹状にはなっていませんでしたが、出している部分の腸全体に異物があり、閉塞しています。

腸閉塞で腸切開を行っている様子

今回は4か所腸切開を行いました。

写真の左、真ん中、右端とその先の写ってない部分にも切開をしています。

摘出したひも状異物

摘出した異物です。

プラスチック状の人工物があり、そこに食渣や草などが絡みついてひも状異物を形成していました。

まとめ

本症例は1日3回程度の嘔吐と食欲元気の低下という主訴で来院されました。嘔吐の回数がそこまで多くなく、あまりにもぐったりとしていたため他の疾患をいろいろと考えながら検査をしていましたが、

血液検査結果が出る間もなく超音波検査で診断がつき、すぐに点滴を開始し手術準備をし、当日夜には手術をすることができました。

腸閉塞は速やかに診断をし、点滴で状態を安定化させ、早期に手術をすることが肝となります。放置していると命を落とす可能性もあります。

合併症として腸の縫合部の裂開(特に腸吻合の場合)が術後3日~5日で起きやすいと言われていますので、当院では術後3日間は入院し、問題がなければ退院としています。

意外なものを飲みこんでいたり、あるいはこんなものが閉塞してしまうの?!といったものが腸閉塞の原因をなっていることもあります。輪ゴムが原因で腸閉塞をしていたこともありました。

全年齢で発症の可能性はありますが、特に若齢のわんちゃん猫ちゃんがいるご家庭ではなるべく手の届く場所におもちゃなどを放置しないことをおすすめします。