犬の乳腺腫瘍と放射線治療|治療の選択と放射線治療の役割を解説

犬の乳腺腫瘍と放射線治療|治療の選択と放射線治療の役割を解説

「乳首のあたりに小さなしこりがある気がする」
「お腹をなでていたら、前にはなかったふくらみがある」
「胸のしこりが大きくなった気がするけど、悪いものだろうか」
このような不安を感じていませんか?
もしかしたら、そのしこりは乳腺腫瘍かもしれません。
犬の乳腺腫瘍は、避妊手術を受けていない犬で発生しやすい腫瘍の一つで、約半分が悪性といわれています。
できるだけ早く気づくことで治療の選択肢が広がり、予後に影響することも。

本記事では、犬の乳腺腫瘍の基本的な知識から、放射線治療の役割、安全性、治療の流れを分かりやすく解説します。
最後までお読みいただき、愛犬に万が一乳腺腫瘍が見つかったときの参考になれば幸いです。

芝生で伏せてこちらを見る犬

犬の乳腺腫瘍とは?

犬の乳腺腫瘍とは胸からお腹にかけて5対ある乳腺にできる腫瘍のことです。
乳腺腫瘍には良性と悪性がありますが、約半数が悪性とされています。
悪性の場合は周囲の組織に広がったり、肺やリンパ節に転移したりして重症化することがあります。
しこりが小さいから大丈夫と様子をみてしまうと、その間に進行して治療が難しくなる可能性も。
しこりに気づいたら早めに動物病院を受診しましょう。

顕微鏡

乳腺腫瘍の治療の基本|手術が第一選択

犬の乳腺腫瘍の治療の第一選択は手術です。
腫瘍の大きさや位置などに応じて、部分切除から片側乳腺の全切除、場合によっては両側の切除が検討されます。
しかし、次のような理由で手術が難しい場合があります。

  • 乳腺腫瘍のサイズが大きすぎる
  • 他に持病があり麻酔のリスクが高い
  • 肺やリンパ節などに転移がある
  • 手術しても局所再発のリスクが高い

このような場合に例外的な選択肢として検討されるのが、化学療法や放射線治療です。
ここでは、特に放射線治療について詳しく解説します。

乳腺腫瘍の放射線治療とは|どんなときに選択するの?

放射線治療とは、放射線を腫瘍に照射して腫瘍細胞の増殖を抑えたり、腫瘍を小さくする治療法です。
ただし、放射線治療は乳腺腫瘍の根治治療として第一選択になることはほとんどありません。
特に次のようなケースで選ばれる補助的な治療方法です。

  • 腫瘍が広範囲に及んで切除が難しい場合
  • 高齢などの理由で手術ができない場合
  • 手術後に局所再発のリスクが高い場合
  • 痛みや出血など症状の緩和が必要な場合

放射線治療は、腫瘍を完全に治す治療というよりも、「進行を抑える」「症状を和らげる」ための治療として行われることがほとんどです。

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放射線治療の流れ

放射線治療を始める前にCT検査を行い、腫瘍の位置を正確に把握します。
放射線は数回に分けて照射し、健康な組織をできるだけ守りながら腫瘍に集中的に照射するように計画されます。
治療回数は週に数回、期間は3〜5週間程度が目安です。

放射線治療可能な施設が限られているため、通院距離や愛犬の体力面も含めて、慎重な検討が必要です。

放射線治療は安全?|被ばくの心配について

「放射線を何回も浴びても大丈夫?」
「被ばくして体調が悪くなるのでは」
「家族に影響はない?」
このような疑問を持つ飼い主さまもいらっしゃるのではないでしょうか。
放射線治療で使う放射線は、治療に必要な量を小分けにして照射します。
一度に強い放射線を浴びることはなく、体全体への影響は非常に少ないように計算されています。
ただし、放射線は腫瘍にだけ作用するわけではないため、近くの正常な細胞に一時的な副反応が出ることがあります。
放射線治療は「効果とリスクを十分に比較したうえで慎重に選択される治療」です。

放射線治療の副反応について

放射線治療の副反応には次の2種類があります。

急性障害

急性障害は、放射線治療開始から2~3週間で起こることが多いです。
よく見られる症状には次のようなものがあります。

  • 皮膚炎
  • 脱毛やフケ
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 口内炎やよだれ

このような症状は約2週間ほどで治まるといわれています。

晩発障害

晩発障害は、放射線治療後6か月から1年後以降に起こり、次のような症状があります。

  • 脱毛、毛色の変化
  • 骨や皮膚の壊死
  • 肺や心臓の機能低下
  • 白内障、ドライアイ

晩発障害は長く残ることがあるため、治療計画は慎重に立てられます。

まとめ

犬の乳腺腫瘍の治療の基本は、できるだけ早期に外科手術で摘出することです。
乳腺腫瘍の治療として補助的に放射線治療が行われることもあります。
ただし、放射線治療は乳腺腫瘍において積極的に行われる治療ではなく、手術が難しい場合や、症状を和らげる必要がある場合に限って検討される補助的な治療という位置づけです。
しこりに早く気づき、適切なタイミングで適切な治療を行うことが、愛犬の負担を最小限に抑えることにつながります。

当院では経験豊富な獣医師が診察し、最適な治療方法をご提案しています。
気になるしこりを見つけたら、どうぞお気軽にご相談ください。

熊本県玉名市六田
はやの動物病院