幽門狭窄に対する幽門形成術
胃の解剖と幽門狭窄
胃は一つの臓器ですが、解剖学的にはいくつかのパートに分かれます。

食道から胃に入ってきたところを噴門といい、十二指腸への出口付近を幽門といいます。
幽門狭窄とはその名の通り幽門が狭窄(狭くなる)病気のことを総称します。
原因としては、幽門筋の肥厚、幽門部腫瘍などが挙げられますが、今回は幽門筋の肥厚に関しての記事となります。

症状と診断
症状は、幽門通過障害による慢性的な嘔吐と、それに伴う体重減少が認められることが多いです。
肥厚の程度によって症状の出方に差はありますが、何も通らなくなると食べても食べても吐いてしまいます。
診断は腹部超音波検査および造影レントゲン検査にて可能です。

超音波検査です。丸で囲った場所が狭窄部位で、その右側が胃の内腔です。流れなくなった食渣が溜まっています。

造影剤を飲んで1時間後のレントゲンです。矢印の部分が胃の幽門部です。
通常なら1時間も経てば液体はある程度小腸に流れていくはずですが、白い造影剤が赤矢印のところから流れず止まってしまっています。
肥厚性幽門狭窄の原因と治療
幽門筋が肥大する良性幽門狭窄の原因として、胃酸の過分泌が関与しているとされています。
大量の胃酸に長期間さらされることにより幽門筋が炎症を起こし肥厚するのではないか、という理論です。
なので、内科的な治療法としては胃酸を抑える薬や、胃腸の運動を促進させる薬が使用されます。
これらの治療で改善が認められない場合、外科的な治療が必要となります。
外科的治療
幽門狭窄の外科治療方法は大きく2つに分かれます。
・幽門形成術
・胃十二指腸吻合術
幽門形成術は様々な方法で狭くなった幽門を広くする手術で、合併症は少ないですが幽門の拡張度としては中程度となります。
胃十二指腸吻合術は幽門部を切除し、胃と十二指腸を繋げる手術で、狭窄の改善には確実な手段ですが合併症は幽門形成術と比較すると多いとされています。
どちらの術式を選択するかは狭窄の程度などを考慮して決定しますが、定量化された手術基準はありません。
当院では幽門形成術を行い、症状が改善しない場合に胃十二指腸吻合を行う場合が多いです。
今回行ったのは幽門形成術(Y-U形成術)です。



幽門部をY字状に切開し、U字状に縫合することで内腔を広げる手術です。
手術写真です。

胃をY字状に切開したところです。わかりづらいですが、ピンセットで示しているところが幽門部の内腔です。肥厚しており、十二指腸につながるスペースがありません。

内腔の粘膜を切除し、縫合して終了です。
予後と合併症
肥厚性幽門狭窄は適切な手術が行われれば予後は良いとされています。
ただし、今回のような幽門形成術を行っても狭窄が解除されず術後に嘔吐を繰り返してしまう場合は胃十二指腸吻合術(ビルロート1法)を改めて行う必要があります。
幽門形成術のみでもかなり症状は改善するので当院では初手から胃十二指腸吻合を行うことは多くありません。
ただし、幽門狭窄の原因として腫瘍が疑われる場合は当然その部分は切除しなければなりませんので、必然的に胃十二指腸吻合が適応になります。
また、腫瘍が大きく他の臓器(胆管や膵臓など)を巻き込んでおり切除不可能な場合は胃小腸吻合(ビルロート2法やルーワイ法)を行う場合もありますが、腫瘍そのものには何も触れていないのであくまでも対症療法となります。


