猫の尾側口内炎で全臼歯抜歯が必要に?|実際の症例をもとに獣医師が解説

尾側口内炎とは

口内炎というと人でできる白いプクっとしたものが想像しやすいですが、猫ちゃんの口内炎は見た目が異なります。口の奥の粘膜が赤くただれて、腫れてしまいます。

猫の尾側口内炎を示したイラスト

この絵の赤くなっているところです。

口の中の尾側(解剖学的にしっぽ側を尾側と呼びます)が強い炎症を引き起こすため、尾側口内炎という名前が付けられています。

症状としては、よだれが出る、ご飯を食べたそうにするが躊躇する、食べている最中に口をくちゃくちゃとする、口臭がする、口を触ろうとすると怒るなどが挙げられます。

尾側口内炎の原因は、歯石に対するアレルギー反応と言われています。そのため、唯一の治療は全臼歯抜歯(犬歯より奥の歯を全部抜く)もしくは全顎抜歯(全ての歯を抜く)とされています。

間違った治療方法

上述のように、現在のところ治療方法は唯一、抜歯のみとされています。全臼歯抜歯を最初に選択することで、2か月以内の改善率は80%と良好です。

ただし、ご家族様から麻酔の同意が得られない場合に限り、ステロイド注射を打つことで一時的に痛みを引かせる治療をすることがあります。

しかしこれは根本的な解決にはなりません。

最初はステロイドが2か月近く効いていても、だんだん効く期間が短くなり、最終的には効かなくなります。

ステロイドが効かなくなっていざ抜歯をしても時すでに遅し、そのころには抜歯をしても効果がほとんど得られません。

また、ステロイドを長期的に投与することで糖尿病リスクも増大します。肝臓にも影響が出たり、血栓ができやすくなったりします。

結局注射を打ち続けるよりも初回から抜歯をした方が金額的にも安かったということもほとんどです。

全臼歯抜歯

抜歯をするときに全臼歯抜歯と全顎抜歯の2つの選択肢に分かれますが、80%という高い奏効率と麻酔時間を考慮し、当院ではまず全臼歯抜歯を行っております。

全臼歯抜歯も痛みが続く場合は、残った犬歯と切歯(前歯)を抜くことで全顎抜歯を行います。

猫の口腔内にある尾側口内炎

舌の根本の周りが赤く腫れているのがわかりますね。

全臼歯抜歯で抜いた猫の臼歯

抜いた臼歯です。猫の臼歯は14本ですが、ドリルで分割して抜歯をするため数が多く見えます。

通常1時間程度で抜歯が終わりますが、骨性癒着といって歯と骨がくっついてしまっている場合は4時間近くかかる場合もあります。

ステロイドを長期使用していると、骨性癒着をしている症例が多く、結局麻酔時間が伸び、費用も余計にかかってしまうことになります。

骨性癒着を起こしているかどうかは麻酔下で歯のレントゲンを撮影するまでわかりません。

まとめ

尾側口内炎と診断されても、抜歯という正しい治療を伝えられずに漫然とステロイドを打たれている猫ちゃんが多いです。

また、抜歯をしても口内炎が改善しない猫ちゃんの中に、抜歯時に歯が折れて根っこが残っていることもあります。

抜歯後に臼歯の根本が残っているレントゲン画像
抜歯後に臼歯の根本が折れて残っていた猫のレントゲン画像

別症例ですが、他院にて全臼歯抜歯後も痛みが残っており、レントゲンを撮影したところ下顎の全ての臼歯が折れて残っていたため、当院にて改めて抜歯を行いました。

猫の歯は非常に細くて脆く、たしかに折れやすいです。だからといって折れたままにして良いわけがありません。当院では抜歯中に歯が折れたとしても確実に残根を摘出し、術後にレントゲンを撮影し、取り残しがないかを確認しております。

口内炎をなんとかしたいというお悩みをお持ちの方はぜひ一度当院にお越しください。